遺伝性血管性浮腫(HAE)について

遺伝性血管性浮腫は、英語でHereditary Angioedema、略してHAE(エイチ・エー・イー)と呼ばれています。
HAEの発作は、ブラジキニンという物質が体内で増え、血管の壁にあるブラジキニンB2(ビーツー)受容体にくっつくことで起きることがわかっています。体内でブラジキニンの量を調節する物質は複数ありますが、ブラジキニンを減らす役割を果たす物質としてC1(シーワン)インヒビターがあげられます。
C1インヒビターの量が少なく、うまく働かないと、ブラジキニンが体の中に増えてしまいます。ブラジキニンが増えると、ブラジキニン受容体にブラジキニンがくっつくことで血管の細胞に隙間が出来てしまい、細胞と細胞の隙間から水分があふれ出てしまいます。その結果、腫れを起こしたり、強い痛みを引き起こしたりします。具体的には、「抜歯」「手術」「ストレス」「疲れがたまる」などの刺激によりブラジキニンが増えて、激しい腫れやむくみ、おなかの痛みが起こると考えられています。
HAEのほとんどの患者さんでは、生まれつきC1インヒビターの量が少なかったり、働きが弱かったりすることが知られています。

フィラジル®について

フィラジル®は、HAEの急性発作の原因であるブラジキニンの働きを抑える薬です

フィラジル®の成分であるイカチバントは、ブラジキニンと化学的に似た形(構造)を持つように作られた薬です。
イカチバントはブラジキニンと競い合ってブラジキニン受容体にくっつくことができます。そのため、フィラジル®を注射して体内にイカチバントを入れることで、ブラジキニンの働きを抑えることができます。
その結果、発作の起こる前の状態に戻り、腫れや痛みといったHAEの発作を改善します。

フィラジル®の投与量について

通常、2歳以上の小児患者さんには体重に応じて1回10〜30mgを皮下注射します
投与量は、患者さんごとに医師からの指示があります

以下の表は体重と投与量の目安です。実際の投与の際には、必ず事前の医師に指示された投与量を注射してください。

体重

投与量(薬液料)

12~25kg

10mg(1.0mL)

26~40kg

15mg(1.5mL)

41~50kg

20mg(2.0mL)

51~65kg

25mg(2.5mL)

66kg以上

30mg(3.0mL)

体重は小数点以下第一位を四捨五入し整数とする

効果が不十分な場合や症状が再発した場合は、6時間以上あけて、同じ量を追加で注射することができます。ただし、24 時間あたりの注射の回数は3回までです。

2歳以上の小児患者さんには、医療機関より用量調節用に下記「コネクタ」と「ミニシリンジ」が提供されます。使用方法は下記の「自己注射ガイドブック」および「【動画】自己注射の方法(2歳以上の小児)」を参照いただき適切にご使用ください。

●コネクタ
●ミニシリンジ

自己注射の方法

2歳以上の小児患者さんは、体重によって用法・用量が異なる場合があります。自己注射の方法が異なりますので、下記情報を参照ください。

発作の早い段階で、速やかにフィラジル®で治療をするためには、自己注射の方法を正しく理解し、十分な練習をしておくことが大事です。
以下の動画と自己注射ガイドブックを活用して、しっかりと準備しておきましょう。

自己注射ガイドブック
〈2歳以上の小児患者さん用〉

フィラジル®皮下注30mgシリンジ
(フィラジル®)を
ご自身で注射される患者さん
またはその保護者の方へ

>ダウンロードはこちら

フィラジル®が使用できない方

フィラジル®の成分に対し過敏症のある方

フィラジル®の使用に注意が必要な方

(1)急性虚血性心疾患や不安定狭心症と診断されている方
(2)脳卒中を起こして間もない(数週間以内の)方

副作用

重篤な過敏症(頻度不明
アナフィラキシー等の重篤な過敏症があらわれることがあるので、全身のかゆみ、じんま疹、のどのかゆみ、ふらつき、息苦しい、動悸などの症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、主治医にご確認ください。

注:海外の市販後の使用経験により報告されている副作用のため、頻度不明。

注射部位反応

赤くなる、腫れる、熱くなる(熱を持つ、火照る)、かゆくなる、痛くなる など

詳しくは、主治医にご確認ください。

詳しくは、主治医にご確認ください。

注射部位反応の原因と、軽減するための対策

注射の場所が不適切
あざや腫れ、傷や痛みのある場所のまわり5cm程度は注射を避けます。

同じ場所に繰り返し注射
前回、おなかの右側に自己注射したら、次はおなかの左側にするようにします。

注射液の温度(冷たい)
夏場など、注射器を冷蔵庫保存している場合、注射前にシリンジを手で握るなどして薬液を常温に戻します。
ただし、発作時、急を要する場合には直ちに注射することを優先します。

注射後の刺激
注射した場所を揉まないでください。

その他、注射をする際に気をつけること

自己注射をする前に...

使用期限を過ぎている場合は、絶対に使用しないでください。
自己注射をする前に、石鹸と水で両手をよく洗います。
自己注射をする場所を、アルコール綿できれいにします。

自己注射をする際に...

使用済みの注射針は絶対に使用しないでください。
パッケージが破損していたり、一度開封して放置した注射針は使用しないでください。
注射針を曲げたり傷つけたりしないでください。
注射する際は、皮ふ(からだ)の面に対してなるべく垂直に打ってください。

自己注射のトレーニング

フィラジル®には自己注射の練習を行うためのトレーニングキットがあります。

トレーニングは医療機関で受けることができます。くわしくは主治医にご相談ください。


自己注射トレーニングキット(2歳以上の小児患者さん用)

そのほかの情報(関連資材など)

各種ツールの入手については、主治医にご相談ください。